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仲が良いと言うのは本当だろうか。どう見てもそうは見えない二人の雰囲気に、もう泣きそうになった。 しばらく彼女らは口論を続けていたが、女神が不意に何かを思いついたのか、森の向こうを指差した。魔女も、葭の外だったオレもその先に目を向ける。
そして、女神はこう言い放った。
「この近くの村の家を多く破壊したほうが勝ちですわ」
魔女は微笑み、オレは血の気が引いた。だってよ、その村ってオレの故郷なんだからさ。
その時の二人のウインクがやけに印象に残っている。待っててね、と言わんばかりの艶やかな二人の笑顔はあの時、戦慄さえ感じさせた。
額からひやりと嫌な汗が流れた。口を挟む前に、二人の姿は消えていた。わけが分からなかったよ。
今にして思えば、どんなにか無様だったろう。一心不乱にオレは走りだしていた。溢れだす涙が視界を遮っても、小石に足を躓いても、間に合ってくれ・・・・・・ただそれだけを願いながら。
でも、現実は案外冷たいもんだ。大地を震わすほどの揺れが辺り一帯に轟いたんから。
それからどれくらい経ったのか分からないが、オレが戻ったとき、そこにはもう・・・・・・何もなかった。
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