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「何か言い残すことがあるのなら、我が慈悲に従い発言の権限を認める」
淡々と、冷たい声音。曇天の空の下、沢山の群衆が集っていた。世界の反逆者、ゾルネイター教のリーダー。
ガルキスの処刑が、王都で行われようとしていた。
「慈悲深いだって?」
ガルキスは目隠しされ、両腕両足を重い鉄製の拘束具で縛られ、膝まつくような形で処刑台の上に座らせれている。
拘束具は魔力吸収効果のある鉱石で造られているようだ。
どんなに魔力を込めても、何も起こらない。代わりに、魔力を込めた分だけ疲れが増した。
辺りは静まりかえっている。その中で、ニヤリとガルキスは口元を吊り上げた。
「慈悲深いのなら何故、俺を殺す?」
「大魔導師ガルキス。貴様は世界を平和へと導く政府に反逆行為を繰り返し、無駄な殺戮や破壊を行った」
処刑の責任者がそう言う。
「世界を平和へと導く?」
最初は歯の間から小さく漏れるような笑いだったが、それは次第に大きくなり、最後には処刑場の広間全体に響きわたる笑いへと変わった。
「民を苦しめるのは政府だ!民を殺すのは政府だ!私はそれを伝えようとした!!」
「罪は罪だ。セドナの法の裁き、受けてもらう」
「セドナの法を受けるのは政府やそれに尻尾を振る貴様では無いのかァ?ラウゼスよ!!」
最後の抵抗ともとれる罵声をガルキスは浴びせる。正面に立つ処刑責任者のラウゼスは、冷ややかにそれを見下ろした。
「言いたいことはもうないな?処刑官、処刑用意」
シュラ、と鞘から剣が抜かれる音が背後からするのを、ガルキスは感じた。眼は潰されても、耳で感じる。
ピタリと剣の先が、首筋に当てががわれる。
「これより大犯罪者ガルキスの処刑を開始する」
ゆっくり、ゆっくりと処刑官の剣が持ち上げられる。ラウゼスの聖書の言葉がスローモーションに感じる。
「十年後、必ずゾルネイター教は復活する!」
剣は勢いよく降り下ろされ、その後ごとりとガルキスの首が落ちた。
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