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蒼天より降り注ぎし光は、今日も人々を優しく見下ろしている。朝方のメインストリートは出店の開店準備に追われる時間帯だ。
しかし、今日に限ってはいつもり人が多い。
石畳の王都のメインストリートを歩くのは、赤のネクタイに、セーターの上から紺色のブレザーを着た学生達だ。
王都【ラキュール】の季節は春。学校では入学式が始まる時期である。
レンガ造りの町並み。そこには春と子供達の成長の始まりが芽を咲かそうとしていた。
しかし、周りが楽しく談笑しながら学校に向かう中、一人だけポツリと歩く生徒の姿がある。
服装は他の生徒と同じだが、それに似つかない一メートルより長い大剣を背負っている。剣先は鋭い。
歳はまだ十代半か、髪は黒。前髪が目元まで伸びており、その隙間から赤い両目が、ギラギラとメインストリートの景色を睨んでいる。
彼の名前はジェイド・グラグッド。今は亡きゾルネイター教リーダー、ガルキスの息子。
(政府の犬どもめ……)
眼に映るもの全てが、世界政府の管理下にある。独裁と汚職にまみれた、汚らしい世界。
汚れた王都の道を歩いていると思うと、霧消に腹が立った。十年前に政府が滅んでいれば、今頃はもっと平和になっていただろうに。
くだらない。この汚い世界、政府、人々。一度、洗い直さなければならない。
(それをやるのは、息子である俺の役目)
父の成せなかった平和を得るため、世界を変える。そして、父に処刑命令を出したラウゼスを抹殺する。
わざわざ毛嫌していた王都の魔法学校にまで入学するのだ。失敗は許されない。
(やってやるさ)
復讐と野望。この二つを持って、ジェイドは朝のメインストリートを歩んだ。
確かなる意思を持って……
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