Nirvana

2/17
前へ
/285ページ
次へ
気付いたらもう大晦日。 クリスマスには結局雪は降らず、今俺は沙雨那と一緒に除夜の鐘を撞きに来ている。 隣には西園寺。 奴の親が寺院の住職さんなんだってさ。 んで特別に除夜の鐘を撞かせて貰ってる訳。 いいのか俺達が撞いて。 んで今98回目を撞いた訳だ。 後10回。 ……しかしまあ寒い。 そして耳も痛い。 とか言いながら撞いてる俺。 「翔、107回目になったら俺に貸せよー」 西園寺を墓場に埋めたくなったよ。 とか言いながらも後7回。 今日は綺麗な星空だ。 蕎麦も食べたし、鐘は撞けるし。 いい日だな、今日は。 とか言いながら後4回。 「お兄様、最後の1回はどうします?」 傍らにいる沙雨那が俺の服(何故か浴衣)の裾を引っ張って言った。 何故か浴衣着せられました。 浴衣着る物じゃないでしょこれ。 「じゃあ皆で撞くか。おーい、西園寺ー」 俺は哀れな西園寺君に助けの手を差し伸べてあげた。 さあ後2回だ。 特徴的な鐘の音が鼓膜に響く。 「よし、俺の出番だな」 西園寺は光の速度に勝てそうな程速いスピードで俺の許に来た。 さあ後1回だ。 時刻は23時59分。 そして今、今腕時計の長針が完全に12を指した。  「A Happy New Year!」 俺は思い切りそう叫び最後の1回を皆で撞いた。 鐘の音と共に新年が始まった。
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加