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「先生、ここへは一人で来たんですか?」
「ああ、君を見てくるとは言ってあるがお忍びで来ているからね。ここまでもバレない様にこっそり来たよ。」
大神は無邪気に言った。
「先生はいつもそうですね。もう子供じゃないんですから。」
雨宮は少し微笑みながら返した。
「まあいいじゃないか。それより話があるんだ。聴いてくれるかな?」
「何です?」
「君は楓を愛しているかね?」
突然の質問に雨宮は戸惑った。
「何を突然?」
「いいから答えてくれ、どうなんだ?」
「もちろん愛しています。どうしてそんな事を訊くんです?」
すると大神は一息置いて言い出した。
「先日、松坂が君を六本木で見掛けたそうだ。女性と二人で歩いて車に乗り込んで行ったと言っていたよ。」
松坂…それは大神のマネージメントを務めている腰巾着のような存在だ。大神の令を絶対とするような厄介な男だった。
「いや、それは…」
雨宮が弁解をしようとしたが、大神が掻き消す。
「何だというんだ。そりゃ君の様に才能もあって甘いマスクときたら女性は放っておかないだろう。しかし、君は婚約者がいるんだ。私の娘だ。」
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