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「まだそんな事を言うのか!譲る訳ないだろう。誰か他の人間に譲るのもいいかもしれない。とにかく、もう今後私と楓には関わらないでくれ!縁を切ってしまおう。いいじゃないか、ヨーロッパでは活躍は続けられるだろ。」
大神に見放された雨宮は、自分の失敗が招いた事実を受け止められずにいた。
「待ってください。お願いします。」
雨宮は去ろうとする大神の腕を掴んで懇願した。
これまで積み上げた物を崩したくなかった。大作曲家の新作と愛らしい恋人、どちらも失う訳にはいかなかった。
しかし、大神は腕を振り切り突き飛ばした。
「今日は演奏を聞いてやるんだから。それでいいだろう。」
大神は尻餅をついた雨宮を見下して言い放った。そして背を向け、ドアノブに手をかけた。
その時、雨宮は大神を睨みながらテーブルの灰皿を掴んだ…
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