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雨宮は焦っていた…目の前には絶命した大神が転がっており、手には血の付いた灰皿を持ったまま立ち尽くしていた。
どうにかしないとという気持ちが雨宮自身を急かした。
どうすればいいのか…考えても頭が真っ白だった。しかしとりあえず大神がこの部屋に来たことは隠して置いた方がいいと判断出来た。
大神は手袋をしていたので、指紋は消す必要は無かった。後は飛び散った血痕を消すだけだった。あまり大神自身も出血しておらず、部屋の数ヵ所を、持っていたタオルを濡らして必死に拭いた。灰皿もタオルで拭いて自分のカバンに入れた。
この死体をどうするか…それが雨宮の一番の課題だった。
とりあえずはこの部屋のタンスに隠そう、まだ開演まで時間がある。考えるんだ、考えるんだ…
雨宮はタンスに大神を運び、ソファーに腰かけた。汗が滲んでいる。殴ってからここまで五分ほどの出来事だった。
「拓郎、別に問題はない?」
マネージャーの秋子が楽屋のドアを開けて言った。
突然の出来事に雨宮は驚いた。しかし応急措置は済ませた後であった。
「ああ、別にないよ。」
雨宮は何食わぬ顔で言った。
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