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「ただいまー」
「あっ!おかえり。今日カレーだよね!」
「ちょっと聞いてよ」
重たそうな買い物袋を下ろし母はなんとも切なそうな顔をしていた。
出掛けの軽快さとはまるで違い、何かあったのは明らかだ。
「今、子猫に会ったんだけど・・・」
「それで?」
「たぶん、キレイだったから飼い猫だと思うんだよね」
「そっかぁ!可愛かった?」
「すごく可愛い顔してたんだけど、迷子なのか、鳴きながら後を付いて来てたんだけど、気が付いたら居なくなってたんだよね」
「じゃあ、お家に帰ったんじゃない?」
「うーん・・・・」
「どうしたの?」
「別に・・・」
何か気になったのか、母は腑に落ちない様子。
「もし、その子が捨て猫でもうちは無理だよ・・・」
「ココちゃんが居るもんね」
うちには既に一匹猫がいる。
名前はココ。
今年の春に産まれたばかりのまだ生後5ヶ月の子猫である。
知り合いの家で産まれ、これ以上飼えないからと言われ、引き取った。
動物を飼うのは初めてだった我が家は、出来る愛情を全てこのココに注いでいた。
そんな一人っ子お姫様状態の猫がいる家にもう一匹なんて、どう考えても無理な話だ。
「もし、その子が捨て猫でも可愛いから誰かが拾ってくれるよね・・・」
「うん・・・」
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