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僕の腕のなかでアンジェが身じろぎをする。身体を離すと、先刻よりも頬を赤く染めて、僕に尋ねてくる。
「勝手な事して怒ってます?セイラン様」
「怒る?どうして?僕はとても嬉しいのに」
そうだね。顔も知らない親にすら、今は感謝しなくなる。ああ、別の人間に生まれ変われると言われたって、御免だね。君がいない人生なんて、何の意味もないからさ。
「最後の最後までレイチェルには迷惑かけちゃったな」
苦笑しながらアンジェは親友の名前を口にした。僕の側で他人の人間の名前を出されたのはちょっと複雑だったけど、育成が終わりに近づき、やはり悲しさを感じていたのだろう。一つ年下の親友との別れを惜しむアンジェに僕はレイチェルが出した「条件」を教えてあげることにした。
「レイチェルとの縁は切れそうにないよ、アンジェ。彼女は、君を補佐官にして新宇宙に連れていきたいそうだ。もちろん、僕も一緒にね。まだ僕と、アンジェの争奪戦を続けたいらしい」
その言葉を聞いたアンジェは、とても幸せそうだった。嬉し涙を浮かべる彼女はとても美しい。本当はこの惑星に、二人で戻ってきたかったけど。
アンジェが幸せならば、それで良い。
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