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その声は、ずっと聞こえていた。遠く夢の彼方から。
哀しく、切なく、狂ってしまうほどの愛しさが、波のように寄せて返して・・・染み入るような想い。
それはいつだって僕をもどかしさでいっぱいにした。
彼女の声はいつだって届いていたのに。
抱き締めることはおろか、慰めることも出来ず、見守ることさえ出来ず・・・ただそこに居るというだけの日々。
帰りたいと。この世でただ一人、愛しい彼女の元へ帰りたいと思う心だけが募った。
いつからだろう。
クラスメイトが、ただ一人の女性へと変わったのは。
もう覚えていないほど昔から、自然とその思いは自分の中にあった。
初めて出逢った彼女は、ただ冷たい僕に屈託のない笑みを向けてくれた。その笑みに覚えたのは感じたことのない気持ち。
それこそが自分の全てと言って良いほどの彼女への思いの始まり。
とても自然な気持ちだからこそ、どう伝えていいか分からず、裏腹な態度ばかりだったけど・・・
冷たいだけの自分に、時には口を尖らせながらも屈託のない笑みを向けてくれた彼女が愛しくて愛しくて。
でも、僕には時間がないんだ、君に気持ちを伝えるための時間が。
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