アンドロイド

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アンドロイド

ドライバーで、最後のネジをギュッと締める。耳の後ろにある、髪に隠れたネジだ。そこだけ人工皮膚が移植されていない。首筋にあるスイッチをONにしてから、オイルまみれの手で、アンドリューはラルのボディを軽く叩いた。 「ラル」 少年の名前を呼ぶ。 彼の瞼が震える。開かれた目は、髪の毛と同じ赤色をしていた。 「アンドロイドプロトタイプK175・B―――ラル」 ベンガル社から修理を依頼された少年型アンドロイド。同じシリーズの少女型「K175・A」は既に販売されていたが、この少年型は、まだ開発段階の新型だ。開発段階と言っても、残された作業はプログラムの微調整だけだそうだが、そこまで来て、突然ボディに故障が起きた。本来は、アンドリューの師匠が処理すべき仕事だったが、その師匠はある日、修理途中、何者かに殺されてしまった。アンドロイドは、師匠の隣でバラバラの状態で転がっていた。師匠を殺した犯人は、まだ捕まっていない。しかし、師匠が死んでも仕事は残っていた。締め切りは延びない。残りの仕事はアンドリューが引き受けることになった。
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