第二章 一時保護施設(一時保護所)

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弟も荷造りを終え、一時保護所に戻ることになった。 私は犬達に別れを告げ、荷物を担いだ。 犬達は尻尾を振って玄関までついて来た。 しかし、私の大きな荷物を見て、犬達の尻尾は下がった。 犬達も、またしばらく私が帰って来ないことを理解したらしく、悲しそうな目で私を見た。 兄は辛そうな顔で「またな。」と言った。 弟はずっと黙り込んでいた。 私は目に溜まった涙を一所懸命隠し、また作り笑顔で 「行ってきます!!」 と、元気よく家を後にした。 どうすることもできないのなら、諦めるしかない。 そう自分に言い聞かせながら、私は前を向いた。 公園の木々は芽をだし、春の訪れを告げていた。 私の心には、春なんてまだまだ先だった。 一時保護所に戻ると、いきなりの身体チェック。 危険物を持ち込んでいないか下着の中までチェックされた。 そして4月5日 一時保護所に別れを告げ、私と弟は車に乗り込んだ。 いよいよ児童養護施設へ行くのである。 車が動き出し、景色が変わりだした時 嫌だっ!!!! 行きたくない!!!!!! 私の心が叫んだ。 今まで、どうすることもできないと諦めていたはずなのに 私は初めて本当の気持ちが溢れ出した。 ずっと聞き分けの良い子を演じていた自分。 でも、本当は施設なんかに行きたくない。 家に帰りたいと、ずっと願っていた。 その願いは、わらにもすがるような思い。 しかし、私の思いは言葉にならず、車は施設に向かって走り続けた。
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