第二章 一時保護施設(一時保護所)

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ある日、私と弟は呼び出され、またあの狭い部屋に通された。 あの時と同じ、若い女の人と中年の女の人がいた。 話は父親の都合で、私達はこれから児童養護施設で生活しなくてはいけないということ。 子どもの私にはどうすることもできず、ただ目の前に突き出された現実を受け入れるしかなかった。 弟は言葉を失い、ぼんやりと椅子にもたれかかっていた。 そんな弟を見るのが1番辛かった。 どこの施設に行くかが決まるまで、もう少し一時保護所で生活を送るようにと話は終わった。 そして次の日 今度は私だけ呼び出された。 部屋に入ると、中年の女の人はおらず、若い女の人だけだった。 「これからあなたのケースワーカーを務めさせていただきます。山下と申します。」 ケースワーカーとは、施設に行く子ども一人一人に担当のワーカーがつく。 あの中年の女の人は弟のケースワーカーらしい。 「何か希望の施設はありますか?」 ありますか?って… 児童養護施設とか行ったことも、見たこともないんだから想像できないでしょ; しばらく考えてみて… 「あの、できれば家から遠い施設がいいです。知ってる人に会いたくないから… それから、できるだけ人数の少ない施設でお願いします!!」 「それは何故ですか?」 「弟がすごく人見知りをする子だからです。弟は家でもずっと引きこもってゲームばかりしていました。友達も作らず、ずっと一人でいたあの子に、いきなり大勢との関わりはキツイと思うので…」 「分かりました。」 私のケースワーカーは、私の言葉1つ1つをノートにメモしていた。
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