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柏木がアメリカに行くと打ち明けてくれた時から、佐和子にはやりたいことがあった。
それは料理だった。
柏木の母がご馳走してくれたような、温かいご飯。
特別なんかじゃなく、普通のご飯。
そんな小さな幸せな形に、佐和子は憧れていた。
いつか、スーパーで買った料理の雑誌に目を向けた。
何度もくたくたになるまで眺めたが、やっぱりよくわからない。
途方に暮れていた時、佐和子の携帯電話が鳴った。
「もしもし」
「柏木さんが居ないからってダラダラした休日過ごしてんじゃないの?」
直美からの電話だった。
「うん、あ!直美って料理とかする?」
「なによ突然。まあ、するよ。そんなすごいものは作れないけど普通の料理くらいはね」
佐和子は顔をパっと明るくして、電話越しなのに頭を下げた。
「教えて!」
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