戻れない時間

6/15
前へ
/203ページ
次へ
「ねぇ?それからご両親には会ってるの?」 佐和子の顔が一層険しくなった。 「祖母が二十歳の時に亡くなってからは、両親のこと全くわからないんだ」 直美は佐和子に気づかれないくらい小さな溜め息を漏らした。 「そうなんだ、意外だったな。佐和子の家族の話」 「そうかな……」 「うん、あんたって温かい家庭で育ちましたって感じの顔してるから」 「えー?それってどんな顔なのよー」 やっと見せた本当の笑顔に直美は安堵した。 「ねぇ、佐和子、ご両親はあんたを待ってるよ。きっと」 それ以上佐和子は何も語ろうとはしなかった。 ただ直美の顔を見て頷いていた。
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5753人が本棚に入れています
本棚に追加