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正人の家の前に着いた時には、直美の笑顔はすっかり消えていた。
「……佐和子……」
不安な表情を向ける直美。
佐和子は直美の肩を力強く抱いた。
「ずっとこのままでいいことなんかないんだから。直美、私に言ってくれたよね。としさんに久しぶりに会ったとき。後悔だけはするなって。その言葉、直美に返すよ」
「うん……」
直美は正人の部屋を見上げた。
佐和子はその背中にエールを送るように言った。
「後悔だけはすんなよ」
直美は振り返らないまま、大きく頷いて、正人の部屋へと続く階段を颯爽と上がっていった。
佐和子はその後姿を、ずっと見送っていた。
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