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パタンっと小さな音を立てて、ドアが閉まった時だった。
「あはははは」
直美の笑い声が聞こえた。
あまりにも予想外の声に、驚いた。
「直美?」
恐る恐る直美の顔を覗き込むと、涙混じりの目で無理矢理笑っていた。
「別れたの?」
佐和子は遠慮がちにたずねた。
「別れたよ。すっきりさっぱり、別れてきた」
「…………」
次の言葉が見つからなくて、佐和子は直美の隣に座った。
「あいつね、あたしがウザイんだって。だからムカついて合鍵を投げつけてやったよ。それがあいつのおでこにスコーンって当たってさ、おかしくておかしく……て」
直美の顔には悲しみが滲んでいた。
その目には今にも溢れてしまいそうな涙。
「あたしが買ったシーツや、お皿までごみ袋にまとめられてた。あたしはバイ菌かってくらいに」
「……ひどい」
涙を堪えながらも、少し震える声で辛い話を淡々と話す直美。
佐和子は悔しくて喉の奥が熱くなっていた。
「酷すぎる。正人さんの為にどれだけ直美が尽くしてきたか」
佐和子の興奮した声に、直美は首を激しく振った。
「佐和子、違うよ……違うんだよ……」
少し渇れた声を絞り出して、直美は佐和子を否定した。
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