430人が本棚に入れています
本棚に追加
時間だけを先送りにできたら どんなにいいだろうと思った。
………。
……。
…。
ほぼ真上に来た太陽の陽射しに たまらなくなって目を開けた。
何もない場所にいるのは そのぐらいが限界だった。
俺は空き教室を出た。
何気なく階段を下りようとした時。
廊下の突き当たりの引き戸が目に入った。
図書館だった。
『閉室中』と書かれた札がかかっている。
よく見ると 戸の端がほんの少しだけ開いていた。
なぜだか気になった。
引き戸を開け 中に入ってみた。
背の高い書棚と閲覧席が 整然と並んでいる。
かすかな風に乗って 埃と紙の匂いがした。
吹き流されたカーテンが 息をするように揺れている。
その向こう 窓際に人影があった。
子供っぽい髪飾りをした 物静かな感じの女生徒。
胸元の校章の色は 俺と同じ三年生だ。
なぜだか 床にぺたんと座り込んでいる。
…気分でも悪いのだろうか?
近づこうとして 彼女が熱心に本を読んでいるのに気づいた。
サボリだろうか?
こんな時間に教室にいないのは 俺か春原ぐらいだと思っていた。
俺のことには気づかず 彼女は本を読み続けている。
と ページをめくる手が止まった。
最初のコメントを投稿しよう!