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高校生活、最後の夏祐司にとって、人生の最後の夏になった。
祐司とは高校3年生の時に始めて同じクラスになったね。
祐司は覚えてるだろうか。始めて会った1年生のあの雨の日を、
道端に車に曳かれて血だらけになった猫の死体を見つけて、何も出来ずに立ち止まって戸惑っていた私に声を掛けてくれた祐司。
『可哀想だね。この辺は野良猫も多いんだ。
あっ、悪いけど、鞄さ。持っててくれるかな。』
『えっ、あっ、うん』
私は慌てて頷き、彼の鞄を預かった。
祐司は血だらけになった猫の死体を拾い上げた。
『あっ、そんなことしたら汚れちゃうよ。』私は少し的外れなこと言った気がしたけれど、彼は気にしてないようだった。猫を抱えたまま近くの公園まで運び、雨の中で濡れながら一生懸命になって猫の墓を作ってくれたね。彼の真剣な眼差しを見詰めながら、あっ、この人なんて優しいだろうって思ったんだよ。そんなちょっと変わった出会いだったけど、それがキッカケになって、祐司とは友達になれたんだよね。
でもね。本当は胸がとっても熱くなったんだよ。
それから、ずっと祐司だけを見ていたんだよ。
だからね。祐司が告白してくれた時なんか。本当は凄く凄く嬉しかったんだ。
でもね。なんだか怖かったんだ。
だから素直になれずにいたし、
『このまま友達でいようよ。
祐司となら一生涯の親友になれそうだもん。』って、心にもないことを言ってたんだ。
ホント!ヒドイよね。私って、
なのに祐司は
『そっか、ありがとう…。あっ、俺。今、振られたんだよな。まあ、仕方ないか。じゃあ、今までどおりってことで』って言って優しい目をしながら微笑んでくれたね。
そんな優しい祐司もクラスでは普通に男子とジャレあってふざけたことばかりしてたけれど、
本を読んでいる時だけは真剣な顔してたね。
だからね。ときどき、『へぇー真面目な顔も出来るんだ』って茶化してみたけど、相手にしてくれないから、ちょっぴり寂しくて、いじけてみせたら、チラッとみて
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