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携帯電話をぱた、と閉じベッドに寝転ぶと自然にため息が出た。
ふう。
枕のそばに置いてあるクマノミの形をした充電器に携帯をセットする。
わあ、もう十一時かあ。ついつい話過ぎちゃったな……それにしても、
桃梨は先ほどの亜紀の言葉を思い返していた。
『あんまそーゆーの、言わない方がいいよ? 相手の方はそれを好しとしていない場合もあるんだから』
って亜紀ちゃんは言ってたけど、どう言う事だろう……もし私が男の子で、女の子よりも可愛い顔をしていたら、きっと嬉しいと思うと思うんだけどな。
思い返せば返すほど、先輩の秀麗に整った容姿が頭に浮かび上がり、嫌になるほど、恍惚(こうこつ)とした息が出た。
肩まで伸びた、伸ばした? さらりとしたセミロングの粟毛に、童顔、て言うのかな? 大きく見開いた小白色の瞳、優しさをそのまま表しているかのような、細く弧を描く、まるで馬の尻尾のような眉。胸が無いのは男の子だから当たり前だけど、貧乳と思えばそれもありか。
元々少しばかり妄想癖があった彼女は、頭の中で葵を着せかえ人形のようにもて遊ぶと、しばらくして静かにくうくう、と寝息を立て始める桃梨であった。
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