第一章『序』

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 その日の空はまるで天と地がひっくり返ったかのような青い空だった。だがそれも時が経つに連れて橙、紅、黒へと変化していく。  今ではもう、僕の世界は夜色に包まれていた。  「へい、らっしゃい!」  鉢巻きを巻いたお兄さんの威勢の良い激励と共に時間は加速していく。  僕の周りを取り囲む、様々な明かり。  少し戸惑いを覚えながら僕は手のひらを差し出した。 「じゃ、じゃあ一回だけ、一回だけだよ?」  そう言って僕は差し出された箱の中に腕を入れ、暫くして取り出す。手の平には一枚の小さく折り畳まれた紙。  お兄さんはそれを受け取り、僕の顔とそこに書かれた番号とを一瞥すると残念そうに呟く。 「残念だったな、また次頑張れや。ほら、残念賞」  そう言ってポン、と手渡された玩具の紙笛を悲しそうに見ていた僕。と、頭に柔らかい何かが触れた。  そのまま、わしゃわしゃと優しく髪の毛を乱される。おかげで僕の自慢の僅かにパーマのかかった髪の毛はくしゃくしゃになっちゃった。 「もう~お母さん!!」  ぷく、とほっぺを膨らませて反抗したけど、お母さんは全く効いてない様子で。  仕方なく僕は、その心地良さに身を任せる事にしたんだ。
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