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「そういえば、薬学部に新しい講師が入ったんですよ。しかも、美人の」女性が手を広げて言った。
男は知らなかった、と言う顔をしてから、「変な時期に入ってきたね」と首を傾げる。
女性にはその仕草が妙に新鮮に見えた。
「しかもその女性(ヒト)、“魔女”って呼ばれてるんですよ」
「何故?」男が抑揚なく問う。
女性は少しだけ艶っぽく笑うと、男に言う。
「いつも黒い服で、髪も瞳も真っ黒なんです。なのに、どこと無く日本人離れした顔付きで」
「、、、ついたあだ名が“魔女”」
「そう“魔女”」
「安易だね。いや、短絡的とも取れる」男は肩をすぼめて言った。
女性は、ため息を一つ。男が“いつも通りになった”のが少しだけ不満だった。
「それにしても明日香くん。君はいつも何処から情報を仕入れて来るんだい?」男が女性に言った。
桔梗明日香はスッと眉を上げてから、「いくら柊先生でも、あまり立ち入って欲しくないです」と笑顔で言う。
柊小次郎はもう一度肩をすぼめて、デスクの端末に眼をやる。
デスクトップのネットワークから大学のページにアクセスすると、学部ごとに教授、講師のプロフィールが閲覧出来る項目がある。
確かに薬学部は更新されていた。
「ニ堂、、、みちる、、、(ニドウミチル)」
柊は新しい講師のプロフィールを見て煙草を最後まで吸いきると、灰皿に押し付けて端末を切った。
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