:月下美人:

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そう言い残すと早足で食器を厨房に運び、新しいオーダーをコック長達に伝え、素早く次の料理の下拵えを済まし、新規のお客を開いたテーブルに案内、オーダーをとってそれをまた料理長に伝えた。 そして、料理ができるまでの少ない時間で酔っぱらいの場所まで素早く戻って来くる。 「相変わらずいい働きっぷりだこと」 「ありがとう! で? コックの募集って本当?」 酔っぱらいは、あぁと笑いながら返事し 「詳しくは知らんが、三日後にそれがあるらしいぞ?」 ニヤニヤしながら酒に口をつける。 「そっか……ありがとう! いい事教えてくれて!」 「いいって事よ」 いい人だなーと悪人面の男を見ながら、ほわほわした気持ちで笑っていると緩みきった気持ちに喝を入れるが如く料理長から怒号が飛ぶ。 「おらぁー! ラル! 料理上がったぞーッ!! ちんたらやってると賄い抜きにすんぞッ!!」 「ひぃっ!? 料理長!? それだけは勘弁して!」 怒られそんな事を叫びながら厨房に走っていくラルを見て店の中で笑い声が響く。 そこからは正に嵐だった、他の店で食材が届かないというハプニングが起こった様でその客達がこちらへと流れて来ているのがこの嵐の原因だと知るのは閉店後の賄い中の事だが、今のラルはそんな事も知らずに、ただ必死に厨房の雑務とオーダーや片づけをする為、店の中を必死に走り回っている。 心の中で稼ぎ時だーッ!!とやる気100%エンジンをフルに回しながら。
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