6人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
ちょっとした悪戯と優しさによって今回の場違いな場所に訪れた夢見る少年は今現在、未だ騙されている事にも気づかないまま夢に向かって全力で突っ走っている。
憐みの視線を受けて心に若干のダメージを受けたラル・ウォーレンだったが、ナイスガイに好印象的な存在だとちゃっかり植え付ける事に成功した。本人はその事に関しては全く気付いてはいないのだが。
そんなラルは面接を終えて持て余した時間をどうしようか、悩んでいた。
(うーん……実技の為に準備とかしておいた方がいいのかな? でも内容が分からないしなぁ……それにしても皆なんで鎧なんて身に着けてるんだろう?)
流石のお花畑の頭を持つラルも不審に感じたのだろう。威圧感を戦力で放つ厳ついお人達を見ながらそんな事をポツリと呟く。
武器をガチャガチャと弄る者も居れば、素振りをする者がいる。何というか物々しい雰囲気が満ちていた。
「まるで料理長が食材を値切る時みたいだなー」
などと呑気にポツリ、料理長と厳つい戦士達を一緒の様に見るラル。やはり楽観的思考はこんな状況でも変わらないようだ。
と自分の気持ちが緩みきっている事に気付いたラルはいけないいけないと首を振って気持ちを切り替えてから、カバンを探ると中から先ほどの『剣』を取り出した。
「うむ、うっとりするぐらい輝いておるなッ」
ふざけた口調でラルは皮の入れ物から剣もとい包丁を抜き出すと光に当ててその輝きにうっとりする。
料理長から貰った大事な包丁。
ラルの持ち物の中で一番と言ってもいい宝物。
最初のコメントを投稿しよう!