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明るく何事にも全力で挑み全力で失敗するが諦める事を知らないバカでお人好しで前向きな少年。
そんな彼でも不安に思う事や挫けそうになる事もある。
そんな時に彼はいつもこの包丁を見て心をぶれない様にしている。軸を乱さない様に、道
を間違えない様に、真っ直ぐ進める様に
そして、緩んだ気持ちに修正を加える。
「よしっ!!」
包丁を皮の入れ物に入れて大きく頷く。
今は自分の夢が叶うかもしれない瀬戸際。面接を受けて現実味が出て来たし、ここが正念場、次の実技試験これに合格すれば夢が叶う。
いつも以上にやる気をフル回転させてラルはまだかまだかと意気込む。
ここで冷静に物事を分析していれば自分がどれほど場違い、いや文字通りの『場』違いに気付けていたかもしれないのだが、残念ながら物事を深く考えるのはラルにとって苦手とする事の一つなのである。
よってラルはこのまま、修羅場である実技試験に進むことになる。
もちろんその実技試験というのは料理の腕を試す試験ではなく
相手を料理する腕を試す試験。
つまりは、模擬戦闘である。
そして
――ピィィイイイイーッ!!
「全員直ちにテント前に集合ッ!!」
そんな召集を掛ける声と笛の音が広場全体に響き、ぞろぞろと男達が動き出す。
――ズシズシと地面を踏みつけて
ラルもやる気に満ち溢れた表情のまま立ち上がり歩きはじめる。
――テトテトと地面を軽く蹴るように
「それでは組み合わせを発表する!!」
遂におっさんのちょっとした悪戯はクライマックスを迎えた。
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