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だが、それはそこまで大きな問題ではない。
もともと、騎士を集める為の試験ではない。
不合格になった者達の大半は国の兵に成り下がる事が多い。それは、そこから実績を積んだ者はまた別のルートで騎士に入団する機会が訪れる。という餌を目の前に吊るして、誘導しているからだ。
そう、この試験の隠された本質は適性のある人材の発掘ではなく、兵を集める事なのだ。
平和な今でも兵は必要だ、領地を守る為、町を守る為、他国への抑止力の為、上げればキリがない。
そして、何が切っ掛けで戦争に繋がるかも分からない。
その為、徴兵など大っぴらに兵士を集める訳にはいかなくなる。他国に睨まれる事をしないのが平和を継続させる秘訣だ。
それでも、兵は必要なので苦肉の策としてこういう事をしているのだ。
それでも本当に適性のあった者が騎士に入団することもあるが、それは稀で国からすれば棚から牡丹餅なのである。
なので、正直言って騎士団からすればはた迷惑極まりない国からの命令だったりする。
それでも物好きな騎士が居て、その人騎士団副団長『レーガン・ワイズ』だけはこの試験でガチの人材発掘を行っている。
その者は短髪を逆立てた笑顔が素敵なナイスガイ、つまりはラルを弄って楽しんでいた面接官である。
受けに来る者はその様な偉い人物が面接官だとは思いもしないだろう。
なので、何気に面接の時点でのレーガンの評価により合否が大きく動く。ただの見切り面接だと望んでいては、痛い目を見る事になるのだ。
「全く……レーガン、貴方は相変わらず悪戯好きね……いい歳なのに」
ポツリと呟いて、その者は部屋にまるで溶け込むように姿を消す。再び、部屋はカーテンが下りたことによって薄暗くなるが、その者はどこに何があるのは、まるで見えているかのように迷いのない足取りで自分が居た場所に戻る。
「しばらく……うるさくなりそうね」
感情の籠っていない無機質な声でそう小さく呟いてから、自分が寝ていたベッドに横になり、真昼間の太陽が元気ですかーッ!!と叫んでいるのにも関わらずそれを無視して瞼を閉じるのであった。
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