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「それは、私への宣誓布告ということだな?」
少年はポカンとした情けない、顔をした。
僕はいつ、この子に喧嘩を吹っ掛けたのだろう。というか
「何怒ってんの?」
「負ける気がしないのだろう? 大した自信だ。それ程の自信、興味がある。どれ程の腕前か、実力試験の時に私が見極めてやる。」
刺さるぐらい、鋭い目付きを少年に向けると、美少年はガチャガチャと白銀と金で装飾された鎧を鳴らしながら、どこかに歩いて行ってしまった。
「料理で鎧?」
少年は、何故怒っているのかは、余り気に止める事もなく、去る美少年を見て、不意に思った。気にしてなかったが、よく周りを見る。
皆、種類は様々だが鎧を身に着けていた。
どういう事だろう。鎧を着けてないのは、恐らく自分だけ
「っは!……ま、まさか」
少年は気付いた。自分が大きな過ちを犯してしまった事に。
「試験を受けるには、鎧が必要なのかー!?」
頭を抱え込み。絶叫した。
やって、しまった。自分は千載一遇のチャンスに浮かれきって、恐らく持参しなくては、ならない物を持って来てなかったのだ。
それが鎧なんて! どうしよう。少年は焦った。非常に焦った。
実際の所、少年は、自分の置かれている立場が、忘れ物をして失格!(これ自体間違っているのだが) だけしか、分かっていない。
少年は把握していない。自分が今いるこの場所が、『料理出来る人募集中』ではなく、どっちかと言うと『相手を料理出来る人募集中』だという事に全く気付いていない。
料理は料理でも全く別物である。
「何て事だ……お城では、エプロンの代りに鎧を着けて料理するなんて……僕は、時代に取り残されたのか! さすがはお城!」
勿論、違う。鎧を着けて料理などする訳がない。
少年は完璧に間違っていた。
冷静に考えれば分る事だっただろう。
しかし、少年は今も絶好調で突っ走っている。
何とも阿呆な者だ。
慌てふためく、少年は、どうにかしなければと混乱する頭をフル回転させるが、いい案が浮かばなかった。
浮かばないまま、号令が掛かった。
「今から見切り試験を開始する。各自名前を呼ばれた者から、こちらへ参れ!」
「!!」
少年は頭が真っ白になった。ついさっき、自分が宣誓布告をした事などほとんど忘れ、口を鯉みたいにパクパクさせ、今、弟一次試験が開始された。
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