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更にざわめいた。あいつ、貴族とどういう関係だ? など、今度は少年に目線が集中し、注目され照笑いを浮かべる少年。
だが、対照的に闘争心丸出しの鋭い視線を少年に送り続けるニアヴァトーレと呼ばれた美少年。
「……」
少しの間、沈黙が続く、訳が分らない様子で、ポカンとした顔でニアヴァトーレの視線を受け続ける少年。しばらくすると視線を外し、ニアヴァトーレはそのままテントへと歩みを進めた。
「嫌われたのかな?」
さて、と少年はざわめきが、収まると同時に砂の付いた服を払いながら、落ち着きながら立ち上がると
「鎧ぃい!!」
再び叫びながら、走り回り始めた。
どれだけ切替えが速いのか、ある意味、凄いと言わざるおえない。
そして
その様子が暫く続くと、遂に少年の名前が呼ばれた。
「ラル・ウォーレン」
「はいっ!」
反射的に返事をしたが、少年の目的は達成されていない。
このまま行けば失格。絶対受かると確信していた、ラルは職場を止め荷物を纏めて来たのだ。
何て気の早い奴であろうか。
とにかく、どうにかするしかない。
このままでは、宿無しで過ごすはめになる。お金もないし、知り合いも殆ど居ない。ラルは、人生の転機から一気に転落の人生へと切り替わろうとしていた。
「ラル・ウォーレン! 何をしている。早くしろ!」
「は、はい! 今直ぐに!」
こうなったら、仕方ない。
ラルは返事をすると、すかさず自分の荷物へと走って行った。
「さて、今から面接を開始するのだが……その前に、一つ質問だ。それは……なんだ?」
ラルは、テントの中に設置された木造の長椅子に腰掛けると、その瞬間に面接官である、短く刈り上げられた髪を逆立てた、目付きの鋭いナイスガイに、頭部を指を刺された。
「兜です。」
ラルは迷いなく、スラリと答え、自らが兜と言った物がずれたので前が見える様に調整する。
すると面接官は、ほぅと呟き、顎に手を当てながら、その使い込まれた『兜』をマジマジと見ると、フフッと笑みを零した。
「キミの故郷では、鍋が防具なのか?」
ラルは、その言葉にビクッと身体を震わせたが、平静心を心掛け、嘘を貫き通した。
「いえ。これは、僕の家に伝わる防具です。」
嘘を付くには、無理があり過ぎる。
ラルの頭には、半円形の鍋を頭から被り、ずれない様に左右に付いた取っ手に紐をくくり付け顎で止めていた。
何と言うか、悲しい姿である。
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