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でも私達は普通に話している。ものすごく平和。ママは私を心配し、私はママに心配されて、まるで普通の母娘―オヤコ―みたい。
車に乗って家族と遊園地に出かけた。私はお菓子が食べたくなって、ママのバックの中をひっくり返した。
「ほらこれがほしいんでしょう?」
見かねたお母さんは、ブウラスのちっちゃなポケットから飴をだしてきたのだった。
「わーい」
私はその赤くて細まあるい小さな飴を、何本も何本も舐めた。かし、かし、と棒から歯で削ぐいて、口の中でふちゃふちゃさせた。
「まだあるわよ、好きなだけ食べなさい」
お母さんは優しい笑顔で、もうひと箱飴をくれた。富永マッチと書かれた小さな箱だった。
私はひたすらくちゃくちゃと、その苦みが舌をぴりぴりと刺激するのを待ちながら、それが甘い甘い歯が溶けるみたいなお菓子であるように空想した。
お母さんの笑顔が見たくて、私はまたひとつマッチを歯で扱くのだった。
足元には足元にはぽっきり真ん中らへんで折れた木切れ達がぱらついていた。
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