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「キスとかヤりたいとか思わなかったわけじゃねぇけど…。 まだガキだったし、手ぇ繋ぐだけでドキドキして嬉しくて…。 満足だったんだよな」     あたしもドキドキしてた。   初めて手を繋いだ時なんて、心臓が飛び出るかと思ったし。     「なぁ、稲穂。 覚えてるか? お前が先輩殴った事」     「うん、覚えてる」     忘れるはずがない。   今思い出しただけでもムカつくし。   まぁ、先生にはこっぴどく叱られたけど…。     「あの時さ…周りの奴らに色々言われたんだよ。 稲穂って俺よりデカかったし、男の先輩に啖呵きって殴るし…。 男より男らしいとか、よくあんな気の強い奴と付き合えるなとか…」     ……うん、あたしだって散々言われたもん。   その頃から女の子にモテ始めたし。     「なんか俺、悔しかったんだよな。 みんなに言われても稲穂は気にしてないみたいだったし。 実際、俺なんかより色んな意味で強かったし。 周りの奴らは俺の事からかうし」     賢吾は少し俯いた。   そんな事を思っていたなんて知らなかった。   いつも明るく振る舞っていたのは、無理してそうしてたんだな。   そう思ったら、とても悪い事をしたなと思った。    
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