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「だったら問題ないね」
「……うん」
恥ずかしくてそれ以外の言葉は出てこなかった。
「稲穂」
優しくあたしの名前を呼ぶ瑞希の声に顔を向けた。
「んっ…」
途端に唇に柔らかくて暖かな感触。
啄むように何度も優しく触れる唇。
胸の奥が甘く、じわりと震えた。
幸せってこういう事を言うのかな?
「ねぇ…稲穂?」
離れた唇がなんだか寂しく感じながら、瑞希の顔を見つめた。
瑞希は端正な顔にいつもの優しい笑みとは違い、甘く切ない表情を浮かべていた。
心臓が早鐘を打ち、あり得ないくらい顔が赤くなる。
「僕…我慢できないかも…」
「えっ…ちょっ……わぁっ!?」
ギュッと抱き締められたかと思ったら、さっきまで寝ていたベッドに出戻っていた。
目の前には、あたしを見下ろすようにしている瑞希。
ヤバい……色っぽい………って違うし!!
つい見惚れていた自分を叱咤しながら、今の状況を逃れるすべを考えた。
ゆっくり近付いてくる瑞希の顔に、身体中から汗を吹き出しながら強く目を瞑った。
そして叫んだ。
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