サイレン。

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貴方は意地悪です。 分かっているくせに。 僕が嫌でも、言えない事。 「…昨日、何してたんですか。」 月曜日の昼休み。 あの日の屋上で空を見上げながら煙草を燻らせる背中に尋ねた。 一度視線をこちらに向け、短く煙りを空に向けて吐き、ふ、と口許で笑う。 「何で?」 上げられた口端にぞくりとする。 何でって? 連絡、くれなかったじゃないですか。 日曜日なのに。 待ってたのに。 言える訳もなく、俯く。 僕以外の誰かが隣にいたんでしょう? 口が裂けても言えない。 「…お前は?」 意外な言葉に顔を上げる。 ぶつかる、視線。 「お前は何してた?」 煙草を指で弾いて床に落とす。 綺麗に磨かれた靴でぐりぐりと2、3回踏んだ。 「わ…私は…」 近付く距離。 離れないといけない。 離れないと、きっと僕は… 「…っ!」 重なる、唇。 生暖かい物が口内をはいずり回る。 チョットきつめの煙草の香りで、それが舌だと気付いた。 あぁ、頭の中でサイレンがなっている。
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