彼。

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彼は、僕よりも12も年上で。 入りたての頃は話すのもままならなかった。 彼は、誰からも尊敬される存在で。 彼を想い慕う人は星の数ほどいた。 彼は、酷く我が儘で。 彼を縛るものは何もなかった。 そんな、彼が、今。 目の前で自分を好きにしていいと言う。 一生に一度の、贅沢な願い事。 震える唇で紡ぐ。 「わ…、たしの、ものになって下さい…。」 彼が微笑う。 「"なれ"だろ?」 腕を引かれ、抱き寄せられる。 唇に温度。 これが僕と彼の初めてのキス。
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