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私はビデオテープを持ってリビングに戻った。
父はジッと前を見据え動かなかった。
「お父さん…」
「…観終わったのか?」
「うん…」
「そうか…」
ふぅ…と息を吹いて父は続けた。
「今まで…辛い思いさせてすまなかった、母さんの…頼みとはいえ…」
「お父さん」
今度は私の言葉が父を遮った。
「いいの…もう、いいの。私は…大丈夫だから」
「……そうか、すまん…明日早いんだろう?もう寝なさい」
「うん…おやすみなさい、お父さん」
私はそう言って部屋に戻った。
リビングに残った父親は天井を見上げた。
「これで…良かったんだよな?…母さん…」
…その夜はいつもより静かな夜だった…
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