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その夜はいつもより静かだった。
結婚式を明日に控えた私は皿洗いを済ませるとリビングへと向かった。
父はリビングのソファに座り本を読んでいた。
「お父さん、明日早いから私もう…」
「春美、ちょっといいか?」
私の言葉を遮って父は言った。
読んでいた本を閉じると父は続けた。
「ちょっとこっちに座りなさい」
「何よ?」
相変わらず、父の事は嫌いだった。
今まで一緒に生活してこれたのが自分でも不思議だった位だ。
「何か用があるの?私もう寝たいんだけど」
そう言った私に父は何も言わずにビデオテープを差し出した。
「何?これ」
「部屋にまだビデオデッキはあっただろう?見てきなさい」
「…分かった」
テープを取ると私は自分の部屋に向かった。
何だと言うのだろう?
明日の為にビデオレターでも撮ってくれたのかしら?
…まさかね、あの父がこんな事するわけない。
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