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箪笥を引っ掻き回し、鏡台の前で一人コスプレに興じるおかんの様子に、二人の息子達は、ただただ圧倒されていた。
「謙兄ィ」
「うん……」
「どうする、あれ」
「どうって言われても……」
嬉々としてコスプレに興じるおかんの図というのは、僕らの立場では、少々コメントし辛いものがある。
「あの話、本当だったんだ」
「……だなぁ」
身内贔屓ではなく、おかんは、なかなかの美人なのである。
若い頃の写真を見る限り、本人言うところの“結構ブイブイ言わせてたイケイケ姉ちゃんだった”というのは、目の前で繰り広げられている独りコスプレ大会の様子からして、間違いない。
無趣味堅物だった親父とは逆に、おかんのほうは、かつてダンスホールに通い詰め、最後は顔パスになっていたというから、幾つもの武勇伝や伝説を持つ女だという噂も嘘ではなさそうだ。
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