秋色影絵

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  公孫樹が散り始める頃になると、じゅんこちゃんのことを思い出す。   出逢ったのは病院。 彼女は、小児病棟の診察室前に置かれた長椅子に、金属製のギプスに似た器具を付けた両脚を投げ出すようにして座っていた。   「アナタわァ、ド、コがァ悪い、のえぇうかァ」 椅子の端っこに座った僕に、彼女は訊いてきた。   少し呂律のまわらない、間延びしたような喋り方。 最初は、ひとつか二つ、年上に見えたのだけれども、それにしては話し方が幼い気もした。 妙な喋り方をする子だな……と思ったけれど、喋り方に癖のある子は、小児病棟では珍しくなかった。   「分かんないから、検査してるとこ。今日はカメラとシンデンズって、先生言ってた」   「そぉ、なんだァ」   「うん。あ、あと点滴。ご飯、食べらんないから」   「お腹、痛ァい、のゥ?」   「ううん。痛くない。痛くないけど、食べると吐いちゃうから……」   「ふぅん」   それだけ話したとき、インターンのタカシ先生が僕を迎えに来た。   「じゃあね」と、長椅子から立ち上がった僕に、   「ご飯、食ァべ、られェると、いィいねェ」   と、彼女は微笑いながら手を振った。  
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