滅びた世界

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肩を上下に動かしながら、息を激しく吸ったり吐いたりして、必死に気を静めようとしているのが、見てとれる。 ボロ布の男は、話をやめようとはせず、続けて喋り始めた。 「それが『王』だ。そして、あろうことか、『王』は『人形』を製造した人間を抹殺した。そう、唯一『人形』を止める事のできる人間が、この世に存在するのが、邪魔だったからだ」 「聞こえないのか!!もう、やめてくれ」 「それが、お前の父親だ!」 瞬間、少年は持っていたナイフをボロ布の男に向かい投げつけた。 カンッッ!! 金属がぶつかり合う、高い音が部屋に響きわたり、トスっとまた音をたてて、ナイフが床に刺さった。 「無駄だ」 ボロ布の男は、低くそう言った。 「ハァ…ハァ…」 少年の息は荒い。ワケも判らず、自分の素性を知られていることに、困惑を隠せないようだった。 「あんた。本当に何者だ!?」 「俺はお前と同じ、世界を滅ぼす者だ」 「!」 少年が、今度は足を震わせた。 「じゃあ、あんたが『勇者』なのか?」 ボロ布の男は、答えなかった。代わりに少年に薄く笑みを作った。 「ーそうか。どおりで詳しいワケだ。アンタも父ちゃんと同じ、世界を滅ぼした一員なんだからな」 「まぁな。で、少しは信用してくれるのか!?」 「いいだろう。父ちゃんと同じ目的を持つ者なら、これ以上、心強い見方はいない」 そう言うと、少年はポケットから、小さな紙切れを出した。薄い茶色をした日に焼けた紙切れで、手で強く触れば、破れてしまいそうな紙切れだった。 「なんだそれは?」 「何だと思う?」 少年は楽しそうに口元を曲げて、勇者に言った。 暖炉の脇に置いてあったオケに水を汲んで来ると、持っていた紙切れをオケの中に落とした。 紙切れがジワリと濡れた。濡れた部分から、黒い線が糸を引いたように、浮き出てきた。 「『人形』の隠し地図か!?」 「そうだ。まだ、世界が滅びる寸前、軍事開発用に製造された『対暗殺専用』の人形。俺は、コレを使って、地下(アンダーグラウンド)を掌握する!」 「なるほどな。だが、その地図によると、場所が王の支配化にある。どうするつもりだ!?」 「その為に、アイツが居るんだろ?」 指を指した先には、先程の幼い子が床に仰向けになり、小さな寝息をたてていた。 「よく、分かってるようだな」
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