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「起きろ。仕事だ」
「ほえ?」
幼い子は、何ともみっともない声を出した。
寝起きで、髪の毛はボサボサ。目も虚ろで、立ち上がっても足取りがおどづかない。
「今から、北の山へ行く。支度しろ」
「なにしにですかぁ~?」
「お前は、敵を倒すことだけ考えればいい」
「はーい」
ボロ布の男は、幼い子に言い聞かせると、今度は、少年の方を振り返った。
「王の支配化と言っても、そう強化はされてない筈だ。コッチに『人形』を持って来るという手もあるが、どうする?お前も一緒に来るか?」
「何を今更。俺は元からついて行くつもりだぞ。『人形』を取られたら、たまらないからな」
「どうやら、俺は信頼されてないらしいな」
微笑するボロ布の男に、少年も微笑した。幼い子は、元からニコニコしていて、表情が変わることはなかった。
「ししょお!準備できましたぁ~!!」
幼い子が、手を上げ下げしながら、ボロ布の男に支度が出来たことを知らせる。ボロ布の男は、少年に視線を向けて「行くぞ」と言ったが、今度は少年が一冊のノートに見入っていて、ボロ布の男の声に気付いている様子はなかった。
「ギ…ル…」
「わ!?なんだ!」
「あ。最初と同じリアクション」
「五月蝿い!準備出来たなら、行くぞ」
少年が顔を耳まで紅潮させて、幼い子を制そうとした。だが、幼い子は聞く耳を持たずに、次の質問をぶつけた。
「ギルってアナタの名前?」
「………」
押し黙る少年。
「忘れた」
そして、一言だけそう言った。
北の山。
そう呼ばれた山は、きちんとした名前がないから、そう呼ぶことしか出来ないと言った方が正しいくらい、深く、青々とした山だった。
噂によると、夜、北の山に入った人間は、そのまま朝を迎えることが出来ずに、何らかの原因で死んでしまうらしい。そのため、周辺の住民はもちろん、遠方から来た者も、北の山に存在する得体のしれないものに臆して、近づくことを拒むという。
「でも、なんで王は、こんな人間が誰も近づかないところを支配したんでしょう?どーせなら、人間がたくさん居る土地を支配すればよかったのに…」
幼い子は、暗闇の山道をパタパタと音をたて、歩きながら、そう言った。少年が楽しそうに口元を曲げて、幼い子に言い返した。
「誰もいないから、こそだ。
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