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この世を支配する『王』は、地上人からも地下人からも見離された土地を自分達の支配下に置くことで、『対戦闘用人形』の大量生産に乗り出した。だが、間もなくして、戦争は終結してしまい、使い道を失った『人形』はそのまま放棄されたんだ」
「要するに、それを操り、世界を滅ぼそうってワケだ」
そう言うと幼い子は、少年に向かいニッコリと笑った。少年も満足した様子で幼い子に向かい微笑する。
「だが、『人形』を操り、世界を破壊しつくしたところで、そのあとはどうするつもりだ?」
「そんなの破壊した後に考えればいい。アンタは先だけを見過ぎだ」
ボロ布の男の言動に腹を立てた少年が、眉を釣り上げ、自分の言葉を無理に正論にしようとする。男は、それ以上は何も言わずに目を閉じた。
真っ暗な森の中を進むこと半刻。三人は、小さな洞窟で休憩をとっていた。
中では、暖をとってるワケでもなく、三人が輪になる形で、一枚の紙を一心に見つめ、何かを真剣に話している様子が伺えた。
「今、いるのがココだ。ココから更に西に一時間ぐらい行けば、『人形』のある洞窟に着く」
そう言うと、少年は指を紙の端から端へと動かした。
「だが、その通り道は『王』の直接的な支配下にある場所でもあるな。なる程。この通り道が、一番の峠になるわけか」
「そういうことだ。アンタ達の腕にかかってるんだ。頼むぞ」
紙から視線を逸らした少年は、ボロ布の男と幼い子、二人を交互に見やった。ボロ布の男はコクリと小さく頷き、幼い子は「はーい」と無邪気に手を挙げた。
「そろそろ行くか」
そう言って、少年は焚いていた薪の火を消したのだった。
森を更に奥へ進むと、今度は大きな城壁が姿を現した。
石段が延々と積まれ、横も縦も、先が見えない位の大きな建物だった。
しかし現在は、手入れが行き届いていないのか、はたまた、誰もそこにいないのか、石段の隙間にビッシリと緑色をしたコケが生えており、あまり気持ちの良いものではなかった。
「誰もいないのか?」
ボロ布の男が、声を立てた。
「いや。居るハズだ。王の軍だって分かってる筈だ!『人形』の存在がどんなに危険か向こうが知らない筈がない!!」
「…そうだな」
その時だった。
得体のしれない何かが、飛んできた。
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