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「影が…。イチ、ニ、サン。結構いるなぁ~」
幼い子が、指をさしながら、驚いた様子もなく、ヘラヘラ笑う。
「やれ」
ボロ布の男が、静かに言った。
瞬間、一つの影が二つに割れた。
少年が、それを目にした時、全ての影はバラバラに砕けっ散っていた。
ドタドタッ!!
三人の耳に、肉片が地に落ちる鈍い音が響いた。
「凄い。これが『人形』の力か…」
少年は身体を微動だにせずに、目の前で起こった光景にただ、ただ驚いていた。そして身体が自然に震え始めた。
「もうすぐ…コレが俺の力にー…」
誰にも聞こえないよう、少年は本当に小さな声でボソリと呟いた。
一時間を過ぎる頃、少年を始めとする三人が通った道の先には、百体を超える影の残骸が転がっていた。
「ーーっっ!!」
「やぁ~」
幼い子の柔らかい声とは裏腹に、影はズタズタに切り刻まれ、無惨にも肉塊と化した。
「コレで全部か?」
幼い子の少し後ろを歩いていたボロ布の男がそう問うと、幼い子が嬉しそうに手を挙げて答えた。
「はーい!!全部でぇーす!!」
「そうか」
ボロ布の男は、それ以上何も言わなかった。
「それよりも、見てみろ。お出ましだぜ」
少年がボロ布の男と幼い子に割って入るように、話しかけてきた。
少年が指を指す先には、小さな洞窟がある。
「…あれが何だ?」
「あれが、俺の望む『人形』さ」
「………」
「分からないか。無理もないな。そこで見ているといい」
そう言うと、少年が洞窟に向かい歩き始めた。
洞窟の前までたどり着くと、辺りの砂利や石を無造作にどかしていった。
すると、小さな丸い穴が姿を現した。
「あった。これだ」
少年が薄く笑う。
ポケットから、丸い琥珀色の石の玉を取り出すと、それを穴にはめ込んだ。
カチ…。
何かと何かがはまった音がした。
瞬間、地面が揺れた!
ゴゴゴ…。
「何だ!?」
「恐れることはない。『開く』だけだ」
「開く?」
「ししょお。アレじゃないですかぁ」
幼い子がボロ布の男に向かい、そう言うと指を洞窟の方に指した。
洞窟の地面は、真っ二つになっていた。そして、石段の階段が現れ、割れた穴から覗いていた。
「なるほど。隠し通路か」
「そうだ。この先に、『人形』はある」
「…それは楽しみだな」
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