滅びた世界

3/12
前へ
/437ページ
次へ
暖炉も火が灯ることはなく、薪もないため、ただのアンティークのような感じになっている。 「父ちゃんが目指した世界は、無くなったよ。父ちゃんも死んだ今、沢山いた仲間もそれぞれに散っていった。でも、俺は違う!必ず、父ちゃんの目指した世界を作るから。天国でみていてくれ」 少年は、誰もいない部屋で、亡くなった父親に語りかけるように、自分の決意を述べた。天に向かい右の手をあげて、拳を作り、父親に自分の想いが届くようにと願った。 「なにやってるの?」 「!!」 突然した声に、少年は振り返った。 「誰だ!?」 そして、得体のしれない声に警戒をしつつ、ズボンのポケットに詰めていたナイフを手に握り締めた。 「大丈夫。敵じゃないよ。一晩だけ泊めて欲しいだけだから。ね!ししょお~!」 「マスターと言え!」 「!!」 更にもう一人いることに少年は驚き、警戒を続ける。 「誰だ貴様等!?出てこい!コレでも俺は結構強いんだぞ!!」 少年の叫び声に、幼い声をした子がウズウズした様子で、『ししょお』の方を見た。『ししょお』は暗闇に紛れて「殺さない程度にやれ」と低く言った。 タン! 床を蹴る音がした。 少年は音のする方を見やるも、そこには誰もいない。 「上か!」 少年が天井を見た。 「残念!ハズレっっ!!」 ドゴッッ!! 瞬間、少年の背中に鈍い衝撃が身体(からだ)に走った。 「がっ…」 少年は、詰まった声を出したかとおもうと、床にそのまま倒れ込んだ。 幼い声をした子は、倒れた少年の手に握られたナイフを自分の手に取ると、それを少年に向かって投げようと振り被った。 「やめろッッ!!」 『ししょお』と呼ばれた男が、幼い子に向かい声を張り上げた。そして、制した。 「『殺すな』と言った筈だ」 「は~い」 幼い声のする子が、残念そうな顔をしながら、ナイフを床に刺した。 「う…」 少年の目が覚めたとき、自分がベッドの上にいることに気付いた。 「気がついたか?」 「てめぇ…」 ベッドの上に座った、ボロ布をまとった『ししょお』と呼ばれた男が、少年の方は見ずに話しかけた。少年は低く唸り、睨みつけていた。 「どういうつもりだ!てっきり俺は殺されると思ってたのにー…。同情ならいらねーよ。一思い(ひとおもい)にさっさとやっちまえ!!」
/437ページ

最初のコメントを投稿しよう!

247人が本棚に入れています
本棚に追加