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暖炉も火が灯ることはなく、薪もないため、ただのアンティークのような感じになっている。
「父ちゃんが目指した世界は、無くなったよ。父ちゃんも死んだ今、沢山いた仲間もそれぞれに散っていった。でも、俺は違う!必ず、父ちゃんの目指した世界を作るから。天国でみていてくれ」
少年は、誰もいない部屋で、亡くなった父親に語りかけるように、自分の決意を述べた。天に向かい右の手をあげて、拳を作り、父親に自分の想いが届くようにと願った。
「なにやってるの?」
「!!」
突然した声に、少年は振り返った。
「誰だ!?」
そして、得体のしれない声に警戒をしつつ、ズボンのポケットに詰めていたナイフを手に握り締めた。
「大丈夫。敵じゃないよ。一晩だけ泊めて欲しいだけだから。ね!ししょお~!」
「マスターと言え!」
「!!」
更にもう一人いることに少年は驚き、警戒を続ける。
「誰だ貴様等!?出てこい!コレでも俺は結構強いんだぞ!!」
少年の叫び声に、幼い声をした子がウズウズした様子で、『ししょお』の方を見た。『ししょお』は暗闇に紛れて「殺さない程度にやれ」と低く言った。
タン!
床を蹴る音がした。
少年は音のする方を見やるも、そこには誰もいない。
「上か!」
少年が天井を見た。
「残念!ハズレっっ!!」
ドゴッッ!!
瞬間、少年の背中に鈍い衝撃が身体(からだ)に走った。
「がっ…」
少年は、詰まった声を出したかとおもうと、床にそのまま倒れ込んだ。
幼い声をした子は、倒れた少年の手に握られたナイフを自分の手に取ると、それを少年に向かって投げようと振り被った。
「やめろッッ!!」
『ししょお』と呼ばれた男が、幼い子に向かい声を張り上げた。そして、制した。
「『殺すな』と言った筈だ」
「は~い」
幼い声のする子が、残念そうな顔をしながら、ナイフを床に刺した。
「う…」
少年の目が覚めたとき、自分がベッドの上にいることに気付いた。
「気がついたか?」
「てめぇ…」
ベッドの上に座った、ボロ布をまとった『ししょお』と呼ばれた男が、少年の方は見ずに話しかけた。少年は低く唸り、睨みつけていた。
「どういうつもりだ!てっきり俺は殺されると思ってたのにー…。同情ならいらねーよ。一思い(ひとおもい)にさっさとやっちまえ!!」
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