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あたしは松川さんの腕を掴んだまま、その人に頭を下げ、中庭の方へ小走りで向かった。
「じゃあねぇ~。」
可愛い笑顔で手を振る彼に、あたしは振り返りながら、何度もお辞儀をした。
優しそうな人だったなぁ。先輩だよね?
「杏那!?」(陽)
そんなことを考えていたら、松川さんに叫ばれた。
「はい?」(杏)
「“はい?”じゃなぁ~い!腕、離せ!この体勢、めちゃくちゃ恐いから!?」(陽)
「…ごめんなさい!忘れてた!」(杏)
あたしは慌てて手を離した。
確かに、後ろ向きで走ってる松川さん、恐いよね…
「杏那…ボクを殺す気だったよね?」(陽)
「!?まさか!違うよ!」(杏)
思いっきり否定するあたしに、疑いの目を向けたまま、松川さんは歩き出した。
「ま‥松川さぁ~ん。」(杏)
情けない声を出しながら、松川さんの後を追って行くと、中庭近くで立ち止まり、あたしを見て言った。
「許してあげてもいいけど…条件がある。」(陽)
「なに?!」(杏)
勢いよく言うと、松川さんは“ニッ”っと笑って。
「“陽良”って呼んだら許してやるよ」(陽)
と言った。
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