願うなら…

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「いいんだ…そーんなこと言っちゃっていいんだ」 歩は立ち上がるとクラス全員に向き直った。 そして息を吸い込むと 「みなさーん!!中川蒼君はヤってる時は…」 その瞬間、歩は蒼に羽交い締めにされ、口を塞がれていた。 「それ以上言ったらこのまま腕折るぞ…」 それは、本気としか思えない声と目だった。しかし歩は器用にすり抜けると、蒼を見てにっこり笑った。 「それは困るな、腕が使えなかったら、蒼を喜ばせられないからね」 「歩…!!」 「照れない照れない」 蒼は負けた、と言うように肩を落とした。 歩と付き合ってから一度も勝てた記憶がない。 能天気でへらへらしてて、成績だって蒼より遥かに下で、決して賢いというわけではないのに、いつも蒼を黙らせる。 しかも、正論や説得力のあることを言っているわけではない。どっちかというとワケの分からないという部類に入るにもかかわらず、だ。 何故か勝てない、あの笑顔を見てしまうと何も言えなくなってしまうのだ。 (俺も重症だな…) 蒼はそっとため息を吐いた。
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