第1章:遅れてきた知らせ

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「ぷはぁっ」 「オヤジかって」 竜介の様子を見ながら、呆れ声の勇太はつまみに手を伸ばす。 「うまいもんはうまいんだよ。 あ、そういえばおまえ今日学校行ったの?」 「ああ、行ったよ。 今日行かなきゃ後々単位つれぇしな」 疲れた表情で答える勇太に、竜介は真剣な顔をして見せた。 「てか4年で、しかもまだ5月なのに単位やばいとかどうよ?」 勇太は一瞬イラっとした表情を見せたが、すぐに気を取り直し竜介に言い返す。 「はぁ? 俺は別に卒業できないとかそういうわけじゃないし。 誰かさんと違って」 ビールを煽りながら横目で竜介を見る。 竜介は両手で缶を挟みこみ、声色を変えた。 「うわ、勇太くんひどーい! 私だってちゃんと卒業できるもーん」 「マジキモイから。 おまえこの前、掲示板に名前貼られてたじゃん。 アレって完璧卒業ヤバイって感じのやつだろ? 4月から1回も出てない授業結構あるし、ぜってぇヤバイって」 勇太はニヤつきながら、わざと脅すように言った。 「はっ!?なにそれ!? 俺しらねぇよ、そんなん! いつよ、いつ!?」 「は?おまえ見てないの? 2週間くらい前から貼ってあるぞ。 1階の掲示板とこ」 「うわぁマジかー…… 全っ然知らなかった…… なぁ、勇太…… 俺を置いて卒業なんかしないでくれよ?」 「おまえ、終わってんな…… まぁ先に素敵な社会人生活を送らせてもらうよ。 せいぜい頑張れよ、留年生」 「おまえそれでも友達かよ!!」 「しーらなぁーい」 本気で焦り出す竜介を、勇太がからかいながら、2人はどんどん酒を空けていく。
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