2825人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
高校2年の2月後半。
季節は、冬から春に変わる準備をしている、そんな季節だった。
卒業式。
それは旅立つ卒業生にとって、大切なイベント。
だけど、それは何も卒業生にとってだけの大切なイベントじゃない。
三年生を送り出す在校生にとっても、大切なイベント。
そして、あたし芳月咲(ヨシヅキサキ)にとっても。
「あー。もうすぐだね。卒業式ー……どうしよー……。」
机に顔を埋めながら、そう呟いたのは、クラスメートで友達の前田祥子(マエダショウコ)。
「だねー。」
あたしはその呟きに短く返事を返した。
「あ。咲なんか余裕じゃない!?あ、もしかして、もう島谷先輩の第2ボタン予約済みなわけ!?」
「違うってばー。大体、あたしが狙ってるのは、島谷先輩の第2ボタンじゃないもんっ!」
『卒業式』
『先輩』
『第2ボタン』
放課後の教室には、この季節ならではの単語が飛び交う。
うちの学校の制服は、高校生だけど学ラン。
だから、卒業シーズンには女の子達が憧れの先輩の第2ボタンを貰おうと必死になる。
「はぁ?まさかあんた、浮気!?島谷先輩に言いつけてやる!」
「だから違うってば!お姉ちゃんに聞いたんだけどね……」
あたしが言い掛けた瞬間、後ろから乱暴にドアが開かれる音がした。ガラっ!
「咲!おっせぇンだよ!サッさと帰っぞ。」
「はいはいっ。じゃあまた明日ね、祥子!」
最初のコメントを投稿しよう!