第9ボタン

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乱暴にドアを開けた男は、これまた乱暴にあたしの腕を引っ張りながらあたしを教室の外へと引きずり出す。 男の名前は、小野塚圭(オノヅカケイ)。 こんな風に放課後に教室から引きずり出されるのも、毎度のこと。 あたしと小野塚圭は、毎日登下校を共にするし、お互いの家に遊びに行くこともよくある。 だからといって、別にあたし達の間に特別な関係があるわけじゃない。 「今日お前んち行っていー?昨日借りた漫画の続き気になってさ。」 「別にいいよー。なかなかでしょ?あの漫画っ♪」 恋人でもなければ、友達でもない。それでも毎日こうして顔を合わせる。 あたし達の関係は、俗に言う幼なじみ。 こんなふうに行動を共にすることが多いと、何かと誤解されるけど。 あたし達の中に特別な何かがあるとすれば、『腐れ縁』ぐらいだと思う。 「あっ!!」 圭の自転車の後ろに股がりながら、あたしが声をあげれば、圭は迷惑そうな顔をして振り返る。 「何?忘れもん?サッさと取り行けよ。」 「違くて!!圭の第2ボタン、頂戴っ!!」  
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