第9ボタン

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圭の腰に手を回して、なんて言って第2ボタンを貰おうかを考えていた。 だけど自転車は容赦なく進み、あっという間にあたしの家の前。 考えもまとまらないままに。 「ほら。着いたぜ。じゃぁ、また後でな。」 「……あっ!圭!」 そう言って圭は、あたしの制止も聞かず斜め向かいの自分の家の前に自転車を止め、家の中へと入って行ってしまった。 その後ろ姿を見つめながら、ため息を溢した後、身体を返して自分の家に帰った。 「あー。何て言おうかなぁ……。やっぱ正直に……、うーん……でも……」 独り言を呟きながら、リビングのソファーに乱暴に鞄を投げた。 「何が?」 独り言に被さった声。 顔を上げると、冷蔵庫からジュースを取り出しながらあたしを見つめるお姉ちゃんの姿。 「お姉ちゃんっ……!びっくりさせないでよ!」 あたしの姉、芳月雪(ヨシヅキユキ)は2つ上で現在大学一年生。 色々相談にも乗ってくれるから、頼りにしてるし尊敬もしてる。 あたしが今通う高校を選んだのも、お姉ちゃんの影響だったりする。 「ごめんごめんっ!それで何悩んでるの?」 お姉ちゃんが、ジュースを片手にあたしに近づきながら言う。 こんなとき、お姉ちゃんがお姉ちゃんで良かったと心から思う。 だって、同姓じゃないと、なかなかこんな話出来ないでしょ? 「……それがね、圭が第2ボタンくれないの……。」  
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