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圭の腰に手を回して、なんて言って第2ボタンを貰おうかを考えていた。
だけど自転車は容赦なく進み、あっという間にあたしの家の前。
考えもまとまらないままに。
「ほら。着いたぜ。じゃぁ、また後でな。」
「……あっ!圭!」
そう言って圭は、あたしの制止も聞かず斜め向かいの自分の家の前に自転車を止め、家の中へと入って行ってしまった。
その後ろ姿を見つめながら、ため息を溢した後、身体を返して自分の家に帰った。
「あー。何て言おうかなぁ……。やっぱ正直に……、うーん……でも……」
独り言を呟きながら、リビングのソファーに乱暴に鞄を投げた。
「何が?」
独り言に被さった声。
顔を上げると、冷蔵庫からジュースを取り出しながらあたしを見つめるお姉ちゃんの姿。
「お姉ちゃんっ……!びっくりさせないでよ!」
あたしの姉、芳月雪(ヨシヅキユキ)は2つ上で現在大学一年生。
色々相談にも乗ってくれるから、頼りにしてるし尊敬もしてる。
あたしが今通う高校を選んだのも、お姉ちゃんの影響だったりする。
「ごめんごめんっ!それで何悩んでるの?」
お姉ちゃんが、ジュースを片手にあたしに近づきながら言う。
こんなとき、お姉ちゃんがお姉ちゃんで良かったと心から思う。
だって、同姓じゃないと、なかなかこんな話出来ないでしょ?
「……それがね、圭が第2ボタンくれないの……。」
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