第2ボタン

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少し目立つ男が通る度に、女が騒ぐ。 大体卒業式なんてのは、在校生の男には全く関係がない。 それを一大イベントだと思ってんのは女だけだ。 「小野塚ー。元気でなっ。今度女紹介しろよ。」 「先輩には、大学で可愛い女が待ってると思いますよ。」 「それもそだなっ!小林も、またなっ!」 色々と面倒みてくれた先輩と別れを交わす。 別に一生会えないわけじゃないから、そこに熱い気持ちだとかは存在しない。 簡潔な別れを済ませた俺は、その場所にいる理由もなくなった。 小林と一緒に、未だ別れを惜しんでは花束を渡したり記念撮影をしたりしている連中を背に、校舎の中へと戻った。 「……前田先輩っ!第2ボタン、くださいっ!」 背中から、聞こえてきた卒業式特有のそれは、どこか聞いたことのある声。 俺と小林は、顔を見合せた後振り向いた。 頬を赤色に染めた女と、前田先輩と呼ばれた男。 女がその男のことが好きなのは明確で、隣の小林が崩れ落ちるのを俺は受け止めた。 前に小林が話してた。 「あの子、なんかいいな。」って。 目の前で第2ボタンを嬉しそうに受けとったのは、紛れもなく『あの子』。  
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