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窓は閉まっているのに、その向こうからは未だ騒がしく声が漏れてくる。
在校生の男には関係ないと思っていたけど、関係のある奴もいるらしい。
心の中で呟きながら、誰も居ない教室の片隅で涙と鼻水で面を汚している仲間を慰めた。
「元気だせって。女はあいつだけじゃねぇって。」
いつか自分が言われた言葉を、そっくりそのまま小林にくれてやった。
「真由美ちゃん……。」
ついさっきフラれた相手の名前を口にしながら、小林は机に伏せた。
フラれて悲しみに暮れる男と、それに付き合わされる俺。
窓の外とは対照的に、この教室は静かに時が流れていた。
その静かな時間を妨害するように、廊下を走る足音。
段々とそれは近づいてきて、俺達の居る教室を前にして、その足音は止まった。
「…………?」
鼻水を垂れ流しながら、小林が顔を上げる。
俺も教室のドアに視線を向けた。
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